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学問で笑え。学問を嗤え。
おまえは社会学ですっかりだめになってしまったのだ。 わたしたちは、社会学のばかが言う、機能不全家族なの。
こんにちは。ザ・たっちと宮崎哲弥さんの見分けがつかないパオロ・マッツァリーノです。
次の単行本の原稿をゴールデンウイーク中にほぼ書き上げまして、ホッとしているところです。まだ本文以外の作業が残っているので、実際に刊行されるのはもう少し先になりますが、一冊ごとに趣向を変える私ですので、今度のもこれまでとはひと味違った本になります。数奇な運命をたどった原稿を長期にわたってまとめただけに、とても感慨深いものがありますが、っていってもなんのこっちゃわからないと思いますが、とりあえず楽しみにお待ちください。 さて、いま『蟹工船』が大ヒット中で文庫の増刷が追いつかない状態なんだとか。またずいぶん懐かしいリバイバルですね。私はずいぶん前に読んだつもりなんですけど、内容の記憶がないところを見ると、途中まで読みかじってやめたのかもしれません。『反社会学の不埒な研究報告』に収録した「あなたにもビジネス書が書ける」でも蟹工船の話題を登場させてるんで(時代の先取り?)、読んだんじゃないかなあ。あやふやだな。 これにかぎらず古典とか名作の類は、学生時代とオトナになってからとでは受ける印象がかなり変わることが多いので、ぜひ再読してみることをおすすめします。というか私はむしろ、古典はオトナになってから読むほうが絶対におもしろいと思ってます。たとえば、漱石の『吾輩は猫である』なんて、中高校生が読んでも絶対つまんないはずです。少なくとも古典落語をおもしろいと思えるくらいの歳にならないと、あのおもしろさは理解不能でしょう。 『蟹工船』がお気に召したというかたに、私からぜひおすすめしたい本があります。『セールスマンの死』(ハヤカワ演劇文庫)です。アーサー・ミラーの有名な戯曲で、それこそ日本でも何百回と上演されてるのでしょうけど、この名作が2年ぐらい前にようやく文庫化されたんです。単行本もしばらく前から絶版に近い状態だったというのに、遅い。遅すぎる。 1949年、戦後まもなくに書かれた戯曲です。それなのにまったく古くない。まるで現代の状況を予測していたのかと驚かされます。当時は主人公のセールスマンの悲哀が主眼だったのでしょうが、いま若いみなさんが読めば、主人公の息子ビフが置かれた状況のほうに共感することでしょう。高校でアメフト部の花形だった彼は大学に行けず定職にも就けず、フリーターのような生活を送っています。逆にいえば、50年前、今と同じ社会状況がアメリカですでに出現していたということなんでしょう。 「三十四にもなって、まだ道がみつからんなんて、恥っさらしだ!」 「問題はやる気がないってことだ」「ビフは怠けものなんだ!」 そう息子に悪罵を投げつける父親もまた、負け組セールスマンとして苦渋の日々を送っているあたりに、どうしようもないやりきれなさをおぼえます。また絶版にならないうちに、ぜひ、読んでみてください。 これとは全然毛色の違う本ですが、こないだ本屋で『あばれはっちゃく』の文庫を見つけたときもちょっと驚いて即購入しました。30、40代の人にとっては懐かしい響きですねえ。といっても思い出すのはテレビのほうで、原作本はさほど読まれてないのかも。 こちらも文庫になるのは初めてみたいです。毎月毎月大量の文庫本が発売されるわりには、なんでこの名作がいつまでたっても文庫化されない、と義憤にかられる本好きのかたも多いはずです。 文庫担当の編集者の選球眼が悪いのでしょうか。それもなきにしもあらずなんですが、他の事情のほうが大きいようです。ひとつには、著者の中には自著の文庫化を承諾しない人もいるようなんですね、なんでだか知らないけど。この場合は、著者が死んでから著作権を継承した遺族がオーケーするのを待つしかない。 もうひとつは、単行本の出版社が承諾しないケース。あまり知られていないことなんですが、単行本をべつの出版社が文庫化する場合、文庫の出版社は単行本の出版社に印税を払うことになってます。これは法律的に決まってることじゃなく、商習慣として日本の出版業界で行われていることなんです。 ところがそれでも単行本の出版社が文庫化を拒否することがあります。こっちが発掘してカネかけて出した本を、文庫屋が横からさらうようなマネしやがって、という理屈にも一理ありますが、著者としてはいい迷惑です。多くの著者にとっては文庫化の印税に生活がかかっているのに、出版社がジャマするんですから。だったら、おまえら単行本もっと売れよ! といいたくもなりますわな。法律的には文庫化の権利は著者側にあるので、出版社に拒否する権利はありませんが、かなり有名なライターのかたでさえ、もめごとを嫌って、文庫化を断念したという話を聞きます。 この出版社のわがままのせいで文庫化されていない名作って、じつはかなり多いのではないかと私はにらんでいます。少なくとも、品切れ状態になった単行本は、べつの出版社が文庫化を申し出てもじゃましないでほしいものです。
第1回 なぜ社会学はだめなのか |